精神科病院での悲喜こもごもを語る/アクターズスクール第5・6回レッスン
8月7日の神奈川精神医療人権センター(KP)設立1周年記念イベントで、大ウケのパフォーマンスを披露したばかりのOUTBACKアクターズスクール。その翌日8日と22日に、第5回と第6回のレッスンを行いました。
この2回のレッスンでは、受講生たちが2種類の課題発表を行いました。1つ目の課題は、「精神科病院にまつわる私の思い出」をテーマに文章を書いてくること。文章をひとりずつ読み上げていきました。
7日のイベントで、侍役を演じて会場を沸かせたサシくんは、ビルから飛び降りて脚を粉砕骨折、内臓破裂という大変な状態になって入院した時のことを語りました。いつもユーモア溢れるパフォーマンスを披露してくれるサシくんにそのような過去があったことを、講師もアクターズスクールメンバーも初めて知りました。サシくんはその入院生活で、とても不思議な体験をしたそうです。それは摩訶不思議なものであると同時に、サシくんが回復していくのにとても大切な体験だったと語りました。
続いて他の受講生たちが、措置入院になった時のこと、不眠状態が14日続いて入院したのに隣の人のいびきがうるさくて一層眠れなかったこと、入院中に劇の発表会をして楽しかったこと、入院することで確執があった母親と離れ救われたことなど、悲喜こもごものエピソードを語りました。
2つ目の課題は、思い出の品を持参して、それにまつわるエピソードを語ること。7月から参加している肉態表現家のトマツさんは、怪しげなビニール人形を持ってきました。子どもの頃、それが欲しくて、欲しくてたまらなくて、母親にやっと買ってもらえた時の天にも上る気持ちを熱く表現しました。その人形は、浅黒く引き締まった筋肉質ボディーをもち、肉態表現家のルーツを見たような気がしました。
8月7日のパフォーマンスで大活躍したトモキチは、亡き父親の形見として大切にしている岩石・鉱物図鑑を持ってきました。これを読むと心が落ち着くそうです。図鑑に載っている石の多くは聞いたことのない名前でしたが、それぞれの特徴をトモキチが読み上げると、形が目に浮かんできました。普段は寡黙なトモキチですが、図鑑の朗読を通して、父親への思いが静かに熱く伝わってきました。
22日の最後には、3グループに分かれてグループワークをしました。トモキチ、タク、サルーテの大切なものにまつわるエピソードをもとに、パフォーマンスを作って発表しました。体を動かしながら、考え、作っていく作業にみんな慣れ始めており、それぞれのエピソードの核心部分を捉えたパフォーマンスができあがりました。
9月は番外編として、鎌倉での野外活動も予定しています。特に作品づくりのために行うものではありませんが、ここでの体験が、本番の空気感に影響することは間違いありません。
そして、本格的な作品づくりがスタートします。何を誰に伝え、どう表現するのか。ひとりひとりが自分に問いかけ、思考し、やってみる。それをひたすら繰り返しながら、11月7日のゴールに向けて演劇の旅を続けていきます。